またにてぃsaxプレイヤーの妊娠・出産記

3.胎動

 つわりのまっただなかで、「ソロの新曲演奏」という依頼が。こんな体力の状態で大丈夫だろうか・・という反面、演奏家としてはとっても興味のある仕事で、なんとかやってみたいと思い、夫とも相談した上で引き受けることに。ただし「なるべく早めに出来た分だけでも楽譜がほしい」と作曲家にかけあって、なんとか負担が軽くなるようにしたかったのであるが・・・結局のところ、全部の楽譜が上がったのが1週間前かそこらで、それからも練習を見ながら修正していく、というので内心、「だいじょうぶかな」と心配であった。

 だけどこの頃から少しずつつわりの症状もマシになってきていて、空腹時は辛いものの、普段のムカムカはだんだんと治まってきていた。演奏を「楽しむ」という余裕も出てきて、新曲演奏というのはなかなか面白い上、いろんなことが勉強になった。

 その本番の当日であった。本番前、なんだかどうも下腹がこそばゆい。「なんかヘンなもの食べたっけ・・・」と少し不安になったけど、そういえば、病院の検診で「もうじきおへその下あたりで胎動が感じられるようになるので注意してみて」と言われたのを思い出す。

 胎動、というのはおなかの赤ちゃんが動くことで、赤ちゃんは体が出来た頃からもう動き始めているんだけど、母体に感じられるのは5ヶ月頃からなのだそうである。

 だけど、ほんとにこれが胎動なのかな?と実感はなく、おなかがぴくぴくと勝手に痙攣をおこしてるような感じだった。けどそんなことは本番中にはスッカリ忘れていて、(というか、それくらい演奏に没頭できたんだけど)いつのまにやらそのおかしな動きもおさまっていた。これは今思えばまちがいなく胎動で、その後どんどん激しくなり、一時期は夜眠れない程におなかを蹴られることになったのであるが・・。胎動というものはまさしく、お腹に命が宿っている、ということを強く感じさせてくれるものである。胎動がはじまってようやく、自分は今、妊娠しているんだ、と実感が湧く、といってもいいと思う。

 最初胎動が感じられるのはときどきで、一日に2度か3度くらいだった。この瞬間に他の人が触って分かるようなチャンスはごくまれで、こんなふうにときどき、かわいらしい動きで「ここにいてるんだよ」ってサインを出しているわが子が愛おしくなるのであった。

Next4.衣装が・・・!

Back